薬用植物総合情報データベース

植物体栽培及び植物の効率的生産法

植物名オタネニンジン
ラテン名Panax ginseng C. A. Mey.
種苗および品種形状および加工性に優れた‘みまき’が従来多く栽培された.近年,市場では根が太く肥大した太物(ふともの)が好まれ,根が太く肥大する品種が育成されている.代表的な品種の特徴は次の通り.‘みまき’:胴が細長く,脚は分岐良好で太くかつ長い.‘かいしゅうさん’:主根は太く,収量性は高い.既存種と比較して紅参の仕上がりの色が鮮やかである.‘信濃麗根’:茎の色が紫,小葉の葉脚が鈍形,主根の色が黄色である.主根はやや太く,長さは中程度.
繁殖種子を用いる.果実は7月中〜下旬に収穫する.催芽処理は,川砂3,種子 7の割合で混合して鉢に入れ,適宜灌水して涼しい日陰で貯蔵する.種子を50ppmジベレリン溶液に24時間浸漬した後に同方法で貯蔵する場合もある.
栽培適性本種は半日陰性の植物であり,生育時は直射日光を避ける必要がある.土壌pH 4.5〜5.8の微酸性土壌で良く生育し,pH6.5以上では生理障害が生じる.土壌水分の至適範囲は50〜60%である.  病害抵抗性が極めて低い.アカグサレ病原菌のシリンドロカルボン菌は連作障害を起こす原因の1つである.
播種,定植および育苗土作り:オタネニンジンを栽培するには,必ず1年は休閑し,青草,堆肥などの有機質を  10a当たり4,000~12,000 kg数回に分けて施し,深さ45 cm 程度の天地返しを年10回以上行い,土層全体の太陽熱殺菌と土壌の物理学的性質を改善する. 育苗:11~12月に床幅90 cm, 床高24 cm の播種床を作り催芽済みの種子を間口(90 cm X180 cm)当たり約900粒(0.9dL)を条播する.床に面し縦に1列25~30粒ずつ10列(条間18 cm)に播き,覆土は3cm程度とし,ワラで被覆する.オタネ二ンジンは直射日光を嫌うので,床上に北側を高くした片屋根を架設し,日光の直射を遮ると同時に生育に適した明るさの光量(3,000~4,000ルックス)に調節する.日覆いは翌年4月中・下旬の発芽時までに行う. 日覆い:ニンジンは陰地性の植物であるから,萌芽したら日光の直射と雨滴を防ぐために小屋かけをしなければならない.特に夕日を嫌うので,播き床は予め西日が入らない方向に作る.小屋かけは,北側を高く南側を低くした片屋根式の日覆いの架設のことで,栽培地の立地条件によって資材の種類や規格なども異なってくる.長野県では杭は径8cm程度のクリ材を使用し,屋根は茅を主体として稲ワラ,麦ワラを加えて竹で押さえ,ほとんど雨が漏らないように架設され,福島県では約25%の雨漏れがあるように作られている.近年,骨組みの材料は木材から鉄骨資材に変わり,前杭と後杭とを連結する方法が普及しており,木材杭に比較して風雨に対する強度が高まっている. 定植:10月下旬,根に傷がつかないように丁寧に掘った苗から上苗を選び,苗圃と同様に作った本圃の植え溝(予め45度に切った溝)に定植する.栽植密度は間口当たり32本(8列×4本)~40本(8列×5本)が普通であるが,4年で収穫する場合はより密植することもある.
肥料
管理定植を行った翌年の4月中・下旬の発芽時までに日覆いをし,展葉後なるべく早く,畦間を軽く中耕し,倒伏と乾燥を防ぐために土寄せを行う.一般的な管理とし  ては除草(5~6回/年),病虫害防除を励行する.   間引きは毎年計画的に行い,年数に応じて適当な間隔にする.その標準は次の通りである.萌芽は一間口(90×180 cm)に約300本であるから,これを萌芽時の間引きで150本ぐらいとし,2年目の秋に60本,3年目の秋に40本,4年目の秋に20本程度を残して間引きを行い,残りは6年目に収穫する.生育3年目からは毎年蕾が付くので,採種株を除き,全部摘み取る.
病害虫駆除1年生株では立枯病,4年生以降では灰色カビ病の顕著に発生する.この他に斑点病が発生する.虫害は,アブラムシ類,ウドコブゾウムシ,コナカイガラムシ,ズイムシが5月上中旬から発生する.
収穫・調製5〜6年目の秋に収穫する.収穫した根は細根を除去し,水洗した後,以下の加工法に供す.加工法は紅参と人参で異なり,人参の加工法は次の3種がある.「生干人参」は根を天日もしくは加熱乾燥する.「御種人参」は根を85℃の熱湯で10分間湯通しした後,天日乾燥する.「白参」は根の周皮を削り天日乾燥する.紅参の加工法は,根を90〜93℃の蒸気で2〜4時間蒸し,65〜70℃で6時間加熱乾燥した後,さらに火力または天日乾燥する.
収量生根で10a当たり300~600 kg である.
参考情報(生物活性)抗酸化活性について,部位別のORAC値(μmolTE/g 新鮮重)は,オタネニンジン,地上部全体:54.5,根・根茎:17.6.
参考情報(生物活性)ファイル
特性分類表 
表題オタネニンジンの特性分類表
画像、ファイル オタネニンジンの特性分類表.pdf
備考
栽培暦 
表題オタネニンジンの栽培暦
画像、ファイル オタネニンジンの栽培暦.pdf
備考
栽培方法関連データ 
表題オタネニンジンの無機成分含有率
関連データ種別無機成分吸収量
画像、ファイルオタネニンジンの無機成分の含有率.pdf
概要オタネニンジンの窒素,リン酸,カリウム,カルシウムおよびマグネシウムの含有率

表題オタネニンジンの洗浄工程
関連データ種別調整法
画像、ファイルオタネニンジン加工洗浄工程.jpg
概要収穫したオタネニンジンは,洗浄機を用いて洗浄する.

表題オタネニンジンの湯通し
関連データ種別調整法
画像、ファイルオタネニンジン加工湯通し.jpg
概要洗浄したオタネニンジンは,約85℃で10分間の条件で湯通しを行う(長野県).

表題オタネニンジンの乾燥工程(長野県).
関連データ種別調整法
画像、ファイルオタネニンジン加工乾燥工程(長野県).jpg
概要湯通しが終わったオタネニンジンは乾燥室内で乾燥させる.

表題薬用にんじん(オタネニンジン)の登録農薬
関連データ種別農薬
画像、ファイル薬用にんじん(オタネニンジン)の登録農薬.pdf
概要薬用にんじん(オタネニンジン)の殺菌剤,殺虫剤および除草剤の登録農薬
栽培方法関連写真データ 
表題オタネニンジン小屋下栽培全景(長野県)
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解説小屋下栽培法を用いたオタネニンジンの栽培(長野県)

表題小屋下栽培法におけるオタネニンジン5年生株
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解説小屋下栽培法におけるオタネニンジン5年生株(長野県)
種子発芽情報データ 
備考
備考ファイル