植物名 | ショウガ |
ラテン名 | Zingiber officinale Roscoe |
文献コード | Zingiber_officinale-Ref-3 |
出典(著者,雑誌,巻号頁,発行年) | Ma X and Gang DR, Phytochemistry 67: 2239-2355 (2006) |
要約(和訳) | ショウガは,薬用および食用として重要なハーブであり,その健康促進作用は世界的に知られている.ショウガは,種子で増やすことができず,根茎を分けることでクローン増殖を行うので,世代間で病原体が蓄積,移行しやすい.加えて,このような増殖技術は,有用なストックを増やすのに時間がかかる.われわれは,これら問題の改善のため,インビトロにおける増殖法を開発した.3つの異なる系統のショウガについて,従来法により温室内で生育した株とインビトロでの増殖由来株との間に化合物組成の違いがあるかどうかを,GC/MSおよびLC-ESI-MSを用いたメタボリックプロファイリングにより調べた.モノおよびセスキテルペン,gingerolとその類縁化合物,ジアリールへプタノイド,これら化合物のメチルエステル誘導体などが同定された.主成分解析および階層的クラスター解析により,系統 (yellow ginger vs white ginger and blue ring ginger) と部位 (根茎,根,葉,シュート) 間の化合物組成の違いが明らかとなる一方で,生育法の違い (従来法による温室における生育とインビトロ増殖を経た植物) による化学的組成に有意な差はないことが示唆された.さらにANOVAの結果も,これら解析結果と一致するものであった.これら知見は,ショウガで認められる多種にわたる一連の化合物の生合成機構は,インビトロによる増殖法の影響を受けないことを示唆する. |
目的 | 種子で増殖できないため、根茎の株分けで、病原体の蓄積が起こりやすく、増殖に時間がかかるショウガの病原体フリーかつ迅速なインビトロ増殖法の開発 |
材料(品種,系統,産地,由来) | アメリカで一般的に使われ、市場で入手可能な3系統のショウガを使用、blue ring ginger (GBR): Tucson (Arizona) の市場で購入、white ginger (WG), yellow ginger (YG): Dean Pinner (Pinner Creek Organics, Hilo, Hawaii) で入手 |
外植片 | (1) 根茎芽: 0.06% の Tween-20 で簡単に洗浄後、水道水で 5 分間洗浄、50℃ のお湯に 10 分間浸潤、2重滅菌水で 3-4 回洗浄、10% ブリーチに 30 分間浸潤、2重滅菌水で 1 回洗浄、根茎芽 (2-20 mm) を切りし、0.5% PPM で 5-10 分間洗浄、2重滅菌水で洗浄、エタノール-水 (7:3) に 1-2 分間入れた後、培地へ、 (2) 茎頂、(3) 葉の基部: 上記操作のブリーチ以降、(4) 花序: まだ開く前の花序を開き、苞葉を注意深く除いて、葯、花弁、子房を滅菌操作は行わず直接培地へ |
初期培養 | カルス化を経る場合: B5 培地 + 3% ショ糖 + 1.5-5.0 mg/L 2,4-D + 0.8% phytogel (pH5.8)、暗所下、25±2℃ でカルス誘導、花序組織の場合、90% 以上の外植片でカルス化、根茎芽、茎頂、葉の基部の場合、5% の外植片でカルス化、カルス化を経ない場合: B5 培地 + 3% ショ糖 + 100 mg/L アスコルビン酸、0.5 mg/L BA、0.1 mg/L チジアズロン (TDZ) + 0.8% phytogel で培養 |
シュート増殖 | カルス化を経る場合: B5 培地 + 3% ショ糖 + 0.25 mg/L 2,4-D + 1 mg/L BA + 0.8% phytogel で暗所下 4~6 週間培養した後、植物ホルモンを除いた B5 培地 + 3% ショ糖 + 0.8% phytogel、16時間明期 (100 μmol/m2・s)、27±2℃ で 4~6 週間培養で葉、シュート、根が分化、カルス化を経ない場合: B5 培地 + 2% ショ糖 + 0.5-1 mg/L NAA、1 mg/L IAA、1-2 mg/L Kin、1-3 mg/L BAの組み合わせ + 0.8% phytogel で検討を行い、 1 mg/L NAA + 2 mg/L Kinの時、シュート形成率最大 (11.5 シュート/外植片)、GWの小植物体の再生とGYの根の生育は、 1 mg/L IAA + 2 mg/L Kinで最も良い結果、B5 培地 + 0.5 mg/L NAA + 2 mg/L Kinで継代した時、培養あたり新しいシュートが 10 でき、増殖率は、継代による低下せず (3 ヶ月で 1つの外植片から 1000 個体の植物体)、シュートの 5% は発根せず |
発根 | カルス化を経ない場合: 発根しないシュートを 1.5% ショ糖 + 100 mg/L アスコルビン酸を含む 3/4 倍濃度の B5 培地上 、16時間明期で2週間培養することで発根誘導 |
馴化条件 | 特に馴化処理をしなくても98%が活着 |
鉢上げ・定植 | インビトロでの培養培地を落とすため水道水で根を洗った後、パーライトを支持体とする養液栽培あるいは土を入れた鉢に移植、 |
栽培条件 | 鉢植えは、Scott's Metromix soil/5ガロンポットで定期的に水道水を灌水し、温室内栽培、養液栽培は、次に示すストック液A とB を 1 L ずつと水道水 98 L を混ぜた養液を循環、ストックA (100x): 12.3 kg の Ca(NO3)2, 800 gのキレート鉄を 2 Lの温水に溶かし、水道水で 160 L にメスアップ、ストックB (100x): 6.344 kg の KH2PO4, 3.570 kg の KNO3, 8.080 kg の 硫酸マグネシウム, 56.4 g の MnCl2 4H2O, 1.76 g の CuSO4 5H2O, 7.05 g の ZnSO4 7H2O, 1.03 g の Na2MoO4 あるいは、 1.21 g の Na2MoO4 2H2O を 150 L の水道水に溶解、2 L の温水に溶かした、27.43 g の H3BO3 を加え、水道水で 160 L にメスアップ |
再生植物体の形質 | 従来の根茎を分けることで増殖した株に比べてインビトロで増殖した株は、生育がよく (より大きく、より緑が濃い) 、根茎収量も増加 [(インビトロ増殖:根茎を分けることによる増殖) GBR: 268.5±2.2:235.6±2.5、GY: 254.3±2.5:216.5±2.4、GW: 214.1±1.8:172.3±1.6] |
分析した成分 | GBR,GW,GYの3系統のショウガの根茎およびGWの根、葉、シュートからの抽出物をGC/MSにより分析した結果、モノテルぺノイド、セスキテルぺノイド、ジンジャロール類縁体など計131成分を同定 (α-zingiberene, (E,E)-α-farnesene, geranylacetate, gingerol, shogaol, paradolなど)、LC-ESI-MSによりジンジャロール含量を定量比較 |
成分の抽出法 | ショウガの各部位を液体窒素で凍結し、液体窒素存在下で破砕した粉末 1 g をガラスバイアルに取り、2 mL のメチル t-ブチルエステル (MTBE) あるいはメタノールを加え、PTFE キャップをして、30秒間ソニケーションにより抽出、1500 rpm で 25 分間遠心し、上清を 0.20 μm PTFE メンブレンをつけた AcrodiscⓇ CR 13 mm シリンジフィルターで上清を処理、フィルターろ過後の MTBE 抽出物は、GC/MS へ使用、メタノール抽出物は、LC-ESI-MS によるジンジャロール定量に使用 |
分析法 | GC/MS: (装置) Thermo Electron Trace GC ultra-DSQ mass spectrometer、(カラム) Alltech EOONO-CAPTM-ECTM-5 キャピラリーカラム (30 m x 0.25 mm i.d. x 0.25 mm film thickness)、(キャリアーガス) UHPヘリウム、(流速) 1.2 mL/分、(オーブン温度) 40℃ で 2分 → 8℃/分 で 100℃ まで加温 → 100℃ で 3.5 分 → 3℃/分で 280℃ まで加温 → 10℃/分で 300℃ まで加温 → 300℃ で 3.5分 → 40℃ で再平衡化、(インジェクター/導入経路/トラップの温度) それぞれ 220/250/200℃、(イオン化エネルギー) 70 eV、検出物質は、HP の NIST マススペクトルライブラリー (NIST/EPA/NIH, USA) と HP ケムステーションのエッセンシャルオイルライブラリーで同定、LC-ESI-MS/MS: (装置) Themo Electron Surveyor HPLC system-LCQ Advantage mass spectrometer、(カラム) Discovery HS C18 カラム (150 x 2.1 mm, i.d., 3μm) + ガードカラム (Supelco, Bellefonte, PA, USA)、(検出器) PDA、(流速) 0.25 mL/分、(カラムオーブン温度) 40℃、(インジェクション量) 5 μL、(移動相) A (5 mM ぎ酸アンモニウム, 0.1% ぎ酸) とB (アセトニトリル) のグラジエント: 0-2 分 5% B、2-57 分 5 → 100% B、57-60 分 100% B、60-65 分 100 → 5% B、65-75 分 5%B、(MSパラメーター) ネガティブモード、(drying N2温度) 350℃ 10 L/min、(ネブライザー圧力) 60 psi、(HVキャピラリー) 4500 V、(HV end plate offset) -500 V、(キャピラリー電流) 62.3 nA、(current end plate) 1378.7、(RF amplitude capillary exit) -99.3 V、(skimmer) -40.0 V、(質量分析範囲) 50-900 m/z |
備考 | |