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組織培養物及び効率的増殖法_文献

植物名オタネニンジン
ラテン名Panax ginseng C. A. Mey.
文献コードPanax_ginseng-Ref-2
出典(著者,雑誌,巻号頁,発行年)Tang DC and Choi YE, Plant Cell Reports 19: 491-496 (2000)
要約(和訳)野生型Agrobacterium rhizogenesを根切片に感染させ,ニンジン(Panax ginseng C. A. Mey.)毛状根を得た.異なった色素沈着をした毛状根3系統を選抜した.1 mg/l 2,4-D添加Murashige and Skoog (MS)培地で不定胚形成能をもつカルスを誘導した.赤い色素沈着をした系統の不定胚形成能は37.4%であった.不定胚形成能を有するカルスからの不定胚形成は2,4-D濃度(0.5 mg/l)を低くすることにより,効率的に誘導できた.10 mg/l GA3含有培地で発芽した不定胚は,GA3を含まない1/2MS培地に移植した.ニンジン形質転換植物体は,側根が豊富で活発に生育する根を有していた.ニンジン形質転換植物体の形態変化は根の収量増加に有益であろう.
目的薬用部位である根の生長が緩慢なニンジンの根の収量増加が期待できる形質転換根(毛状根)からの植物体再分化の誘導を行い,再生植物体の形質を調査.
材料(品種,系統,産地,由来)Panax ginseng C. A. Mey.
外植片圃場栽培3年のニンジン(Panax ginseng)の根を70%アルコールで1分間,2.5%NaOCl中で20分間表面殺菌後,滅菌水で3回洗浄し,2 mmにスライスし,径10 mmのroot diskを切り抜いて使用.
初期培養根切片(Root disk)の上に,24℃で24時間YEB液体培地で培養して得たAgrobacterium rhizogenes 15834株を接種し,3%ショ糖,0.7%寒天を含むMS培地,24℃,暗所で2日間培養.菌を除去するため,根切片を滅菌水で洗浄し,3%ショ糖 + 500 mg/lカルベニシリン含有MS寒天培地に移植し,24℃,暗所で培養.3週間後,根切片の表面から毛状根が出現.2ヵ月後,毛状根が約10 mm長になったら,個々に切り離し250 mg/lカルベニシリン含有MS培地へ移植.約100の根を単離し,カルベニシリン含有MS液体あるいは固形培地で5週間間隔で約1年間継代.その後,カルベニシリンを含有しない培地で維持.赤,白あるいは緑の色素を形成する毛状根を選抜.個々のクローンより,10 mm長の根端を含む根切片を調製し,3%ショ糖 + 0.7%寒天 + 1.0 mg/l 2,4-D含有MS培地(30 ml/ 10×2 cm platic petri dishes),24℃,16時間照明(24 µmolm-2S-1)で培養.赤色を呈する毛状根からの不定胚形成能を有するカルス及び不定胚の誘導効率は,5ヵ月後,37.4%,一方,白あるいは緑の毛状根は,10%以下.
シュート増殖赤色毛状根より誘導し,1.0 mg/l 2.4-D含有MS培地で5週間ごとに継代している不定胚形成能を有するカルスを種々濃度(0,0.1,0.5,1.0 mg/l)の2,4-D含有MS培地へ移植し,不定胚形成を試験した結果,0.5 mg/lで最も高頻度(26不定胚/カルス片)で不定胚が形成し,2ヵ月後に子葉期まで生長.
発根不定胚をカルス片とともに10 mg/l GA3含有MS培地に移植すると,15日以内に緑化し発芽.発芽した不定胚(10 mm長)は,個々に切り離し,1/2MS培地に移植し生長を促進すると2-3ヵ月後に植物体再分化が観察された.10-30 mm長の植物体生育の初期では,ニンジン形質転換植物体は毛状根の表面と同様に胚軸表面に赤色色素が認められ,その形態は,種子胚由来と同様.しかし,生長に伴い,毛状根由来の形質転換植物体は,根の生育が活発で分枝が多く,種子胚由来の植物体とは異なった形態を示した.
馴化条件シュート部と根を有する約6 cm長の毛状根からの再生植物体を土と砂(1:1)を含むプラスチック鉢に移植し温室で栽培.植物体は3週間は,ガラスビーカを被せて馴化させ,その後は通常の温室で栽培.2ヵ月後の生存率は56%.しかし,栽培期間の延長に伴い,シュートと根の接合部が空中浮遊のカビに感染し,おそらく立ち枯れ病と思われるが,シュートが萎れて枯れた.同様のカビの感染は,種子からの不定胚形成で得られた植物体でも観察されており,馴化条件の最適化が必要である.
鉢上げ・定植記載無し.
栽培条件記載無し.
再生植物体の形質記載無し.
分析した成分記載無し.
成分の抽出法記載無し.
分析法記載無し.
備考