組織培養物及び効率的増殖法_文献
植物名 | オタネニンジン |
ラテン名 | Panax ginseng C. A. Mey. |
文献コード | Panax_ginseng-Ref-6 |
出典(著者,雑誌,巻号頁,発行年) | Arya S. et al., Plant Cell Reports 10: 277-281 (1991) |
要約(和訳) | ニンジン(Panax ginseng C. A. Mey.)種子胚から誘導した不定胚形成能を有する4年生の細胞株KCTC PCLよりプロトプラストを単離した.2% Cellulysin,1% Pectinase,1% Macerase,12% mannitolを含む1/2 Murashige and Skoog (MS)培地で5-6時間消化すると22-25×106/g tissueの高収量のプロトプラストが得られた.1×105プロトプラスト/mlがプロトプラスト培養には最適な植付け量であった.アガロース培地で初期分裂頻度10%が得られた.Myo-inositol (6%)がもっとも最適な浸透圧調節物質であった.不定胚形成能を有するカルスから誘導したプロトプラストから体細胞不定胚が形成し,それらは幼植物まで再分化した. |
目的 | 成長が緩慢で,種子が得られるまでに3年以上を要するニンジンの分子育種のための手法の開発. |
材料(品種,系統,産地,由来) | Panax ginseng C. A. Mey. |
外植片 | 種子 |
初期培養 | 4℃,暗所で保管した種子の種皮を取り除き,70%エタノールで5分間,50% clorox solutionで20分間殺菌し,滅菌水で3回洗浄.種子胚を取り出し,1.0 mg/l 2,4-D + 0.01 mg/l kinetin (Kn) + 3%ショ糖 含有MS固形培地(0.7%寒天)に植付け,25℃,ア暗所で10週間培養.4週間後からカルス形成が認められ,6週間後,カルスの表面全体に体細胞不定胚が形成.カルスは4週間おきに継代し,20℃,16時間照明下(30 µmolm-2S-1)で維持. |
シュート増殖 | 不定胚(250 mg)を0.3 M sorbitol + o.5 M CaCl2を含む溶液で1時間原形質分離を誘導した後,10 mlの酵素液(9 cm Falcon,2% Cellulysin,1% Pectinase,1% Macerase,0.5% potassium dextran sulphate, 12% mannitolを含む1/2(MS培地)に入れ,25℃,暗所,はじめの1時間は50 rpm,その後40 rpmで5-6時間旋回培養.不定胚は処理前に細かいピンセットで機械的に押しながらバラバラにした.反応後の細胞は,100 µmと50 µmの網を通し,未消化物からプロトプラストを分離.プロトプラストは等量のCPW 16 saltsで洗浄し,70×g,スイングバケットローターで5分間遠心分離.沈殿物をW5培地で2回,培養培地で1回洗浄.プロトプラストは最終的に,myo-inositol (0.33 M) + 1% glucose + 1% sorbitol + 0.5% galactose + 1.0 mg/l 2,4-D + 0.5 mg/l BA + 0.5 mg/l Kn含有1/2M8P培地に再けん濁.1 gの体細胞不定胚から最終的に約22-25×106個のプロトプラストを単離.アガロースビーズ法により培養10日後にプロトプラスト増殖効率,コロニー形成を観察.最適なプロトプラスト培養のプロトプラスト密度は1×105プロトプラスト/ml,48-72時間以内に細胞壁形成.初めの細胞分裂は培養開始3-8日後.液体培養でのプロトプラスト増殖も試みたが,アガロースビーズ法の方が増殖効率,コロニー形成とも良好.また,ニンジンプロトプラストの細胞分裂及びコロニー形成には,より複雑な組成の1/2濃度のM8P培地が効果的で持続した細胞分裂とコロニー形成には0.33 M myo-inositolが必須.培養5週間後,細胞分裂したプロトプラストの30%からミニカルス形成.培養10週間後,コロニーが目視可能な状態になったら,カルス成長促進のため,培地を1.0 mg/l 2,4-D + 0.01 mg/l Kn + 3%ショ糖含有MS培地に交換.径1-2 mmに成長したカルスをPCM IIIアガロース固形培地(0.7% agarose + 3%ショ糖 + 1.0 mg/l 2,4-D + 0.01 mg/l Kn含有MS培地)に移植し,16時間照明下(30 µmolm-2S-1)で体細胞不定胚を誘導.培養6週後に前胚形成.多数形成した球状胚はカルスから切り離し同PCM III培地に移植して培養すると,心臓胚,多数の子葉を持った胚に成長. |
発根 | 完熟した体細胞不定胚を再分化培地(PCM IV:0.7% agarose + 3%ショ糖 + 1.0 mg/l BA + 1.0 mg/l GA3含有1/2MS培地 )に移植し4週間培養すると,植物体再分化.ほとんどの再分化体は,2本以上の上胚軸を有した.これらの植物体は,同培地に継代しさらに成長させ,圃場への移植を検討中. |
馴化条件 | 記載無し. |
鉢上げ・定植 | 記載無し. |
栽培条件 | 記載無し. |
再生植物体の形質 | TLC及びHPLC分析の結果,幼植物のサポニン画分のパターンは,従来のニンジンと同様であり,TLCでもHPLCでもginsenoside Rb1とginsenoside Rg1が検出された. |
分析した成分 | ginsenoside Rb1,ginsenoside Rg1,サポニン画分 |
成分の抽出法 | 凍結乾燥した幼植物(0.8 g)を60%メタノール(20 ml),100℃で3時間抽出し,濾過後溶媒を留去し乾燥.残査をH2O(10ml)で溶解し,Sep-Pak C18カートリッジに吸着.サポニン画分をメタノール(10ml)で溶出.得られたサポニン画分は,TLC及びHPLC分析. |
分析法 | TLC条件:Kiesel gel 60 F-254 plates,展開溶媒;n-BuOH-AcOEt-H20 (40:10:50),検出:10%H2SO4噴謀+ 加熱(100℃). HPLC条件:Senshu Pak NP (10×300 mm)カラム,移動層:26% CH3CN (for ginsenoside Rg1)及び33% CH3CN (for ginsenoside Rb1),流速3 ml/min,検出:UV202 nm,個々試料はメタノールに溶解. |
備考 |