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組織培養物及び効率的増殖法_文献

植物名オタネニンジン
ラテン名Panax ginseng C. A. Mey.
文献コードPanax_ginseng-Ref-7
出典(著者,雑誌,巻号頁,発行年)Shoyama Y et al., Planta Medica 54: 155-156 (1988)
要約(和訳)カルスを介したニンジン(Panax ginseng C. A. Mey.)不定胚形成を若い花芽より3ヶ月で誘導した.完熟胚は,GA3 (1.4 µM) + BAP (2.2 µM) + 1.5%ショ糖含有1/2濃度のMurashige and Skoog (1/2 MS)培地で発芽可能であった.GA3 (1.4 µM) + BAP (11.1 µM)含有培地では,1シュートから切片当たり8本のシュートを持つマルチプルシュートが形成した.一方,GA3 (1.4 µM) + BAP (4.4 µM)添加は,花芽形成を誘導した.シュートの発根は,5.4 µM NAA含有MS培地が最良であった.引き続き,幼植物はバーミキュライトに移植した.
目的成長が緩慢で,通常の栽培では品質の安定した植物の増殖が困難なニンジンの効率的増殖法の開発.
材料(品種,系統,産地,由来)Panax ginseng C. A. Mey.(島根県圃場保存栽培株)
外植片径3-5 mmの若い花芽.
初期培養花芽を水道水で洗浄後,0.1% Tween 20を含む3%次亜塩素酸ナトリウム液で10分間殺菌し,70%エタノールで1分間殺菌後,滅菌水で2回洗浄.花芽を無菌的に花梗から切り離し,種々オーキシン(IAA,IBA,NAA,2,4-D),BAP,GA3を含むMS固形培地(3%あるいは1.5%ショ糖,0.3%ゲルライト),25℃,暗所で培養し,カルス及び不定胚誘導.4.5 µM 2,4-D含有MS培地では,高収率(75%)かつ短期間(3ヶ月)でカルスを経由しながら不定胚形成を誘導.不定胚増殖及び発達(心臓胚)には継代が必要.
シュート増殖不定胚からの正常シュート分化のため1.5%あるいは3%ショ糖 + GA3 (1.4 µM) + BAP (2.2 µM)含有1/2MS培地,20℃,16時間照明下(2000-2500 lux)で6週間培養したところ,1.5 %ショ糖含有培地では高率(71%)で元植物と形態的に同等な正常シュートが分化.一方,3%ショ糖含有培地での正常シュート分化率は45%に低下.25℃,16時間照明下(2000-2500 lux)でシュート増殖条件を検討した結果,1.4 µM GA3 + 11.1 µM BAP培地で8週間培養すると1シュートあたり約8本のシュートが形成した.一方,1.4 µM GA3 + 4.4 µM BAP培地では全てのシュート片に花芽が形成した.マルチプルシュート形成においても,3%ショ糖含有培地は,1.5%ショ糖含有培地よりも劣っていた.
発根増殖したシュートを個々に分割し,NAA,IBA及びIAA添加培地に移植し,20℃,16時間照明下(2000-2500 lux)で培養すると発根.NAA (5.4µM)添加は,75%のシュートを発根させ幼植物形成を促進.
馴化条件幼植物は,バーミキュライトに移植し,湿度を保つため,10日間カバーで覆った.その後徐々にカバーを開けて湿度を下げながら,1ヶ月間20℃で栽培.土壌移植後70%が活着.圃場への再分化体の栽培も検討.
鉢上げ・定植記載無し.
栽培条件記載無し.
再生植物体の形質TLC及びHPLC分析の結果,幼植物のサポニン画分のパターンは,従来のニンジンと同様であり,TLCでもHPLCでもginsenoside Rb1とginsenoside Rg1が検出された.
分析した成分ginsenoside Rb1,ginsenoside Rg1,サポニン画分
成分の抽出法凍結乾燥した幼植物(0.8 g)を60%メタノール(20 ml),100℃で3時間抽出し,濾過後溶媒を留去し乾燥.残査をH2O(10ml)で溶解し,Sep-Pak C18カートリッジに吸着.サポニン画分をメタノール(10ml)で溶出.得られたサポニン画分は,TLC及びHPLC分析.
分析法TLC条件:Kiesel gel 60 F-254 plates,展開溶媒;n-BuOH-AcOEt-H20 (40:10:50),検出:10%H2SO4噴謀+ 加熱(100℃).
HPLC条件:Senshu Pak NP (10×300 mm)カラム,移動層:26% CH3CN (for ginsenoside Rg1)及び33% CH3CN (for ginsenoside Rb1),流速3 ml/min,検出:UV202 nm,個々試料はメタノールに溶解.
備考