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組織培養物及び効率的増殖法_文献

植物名シャクヤク
ラテン名Paeonia lactiflora Pallas
文献コードPaeonia_lactiflora-Ref-1
出典(著者,雑誌,巻号頁,発行年)Tian D et al., Scientia Horticulturae 123: 385–389 (2010)
要約(和訳)シャクヤクの外植片からのシュート形成能をBA,TDZ,GA3添加の半固形MS培地で調査した.節の無い茎と葉柄からは培養2日以内にカルスが形成したが,シュートは形成しなかった.不定芽は生長点がある組織の切片(節部,付け根のある葉柄や小葉柄切片)に形成した.節間,付け根の無い葉柄,葉切片ではシュートは誘導されなかった.節切片がもっともシュート誘導に適しており,20日以内の培養で最高20本のシュートが得られた.シュート形成にはBAよりTDZ(0.1~3mgL-1)が適していたが,高濃度ではシュート伸長を阻害した.BAとTDZの組み合わせではシュート誘導率を上昇させることは出来ず,シュートが矮化した.外植片を20mgL-1のTDZ液で処理すると不定芽を直接誘導できたが,シュート数とシュート長は,処理時間の延長に伴って低下した.GA3はシュート伸長に効果があった.
目的シャクヤク培養シュート誘導に最適の外植片と植物成長調節物質の組合せを明らかとすること.それにより, 商業的な実験室での純系の栽培種の増殖を可能とすること.
材料(品種,系統,産地,由来)3種の栽培種:‘Xi Shi Fen’ (‘XSF’), ‘Yang Fei Chu Yu’ (‘YFCY’) , ‘Fen Ling Hong Zhu’ (‘FLHZ’).
外植片若いシュートから調製した5種の外植片(節を含む5-8 mm長の茎片,節を含まない5-8 mm長の茎片,5 mm長の接合部を含まない葉柄片,5-8 mm長の先端の主葉柄と3つの小葉柄からなるフォーク型の葉柄片,未展開または展開して直ぐの葉から調製した16-25 mm2の葉片)
初期培養若い伸びたシュートは水道水で洗浄し,2-4 cm長に調製した.シュート片ha,70%エタノールで8-10秒,続いてTween20(1滴/100 mL)を含む市販の10%ブリーチで15分間殺菌し,滅菌水で3回(5分間)漱いだ.殺菌後,3-8 mmの短い切片を調製後,シャーレに置床し,その後,25 mm×95 mm試験管あるいは小さなプラスチック製培養瓶に移植した.培養器は,蛍光管(60 lx)下,16時間明期,25±1℃で維持した.実験1:'XSF'の5種の外植片の種々植物成長調節物質(PGRs)添加培地に対する反応を評価した.培地は(1)1/2Murashige and Skoog培地 (1/2MS) + 1 mg L-1 ベンジルアミノプリン (BA) + 0.1 mg L-1 ジベレリン酸 (GA3); (2) 1/2MS + 0.1 mg L-1 BA + 1 mg L-1 GA3; (3) 1/2MS + 1 mg L-1 BA + 3 mg L-1 チジアズロン (TDZ); and (4) 1/2MS + 1 mg L-1 BA + 3 mg L-1 TDZ + 1 mg L-1 GA3.実験2:'YFCY'及び'FLHZ'の接合部を含む葉柄切片以外の4種の外植片を用い,種々濃度のTDZを含む1/2MS培地でのシュート誘導能を評価した.(1) 0 mg L-1 対照区; (2) 0.1 mg L-1; (3) 0.5 mg L-1; (4) 1 mg L-1; (5) 3 mg L-1. 12日後に外植片を新しい1/2 MS + 1 mg L-1 GA3へ移植した.実験3:'XSF'の葉切片を除く4種の外植片を高濃度のTDZ(20 mg L-1:90 µM)で,(1) 2分; (2) 15分; (3) 60分,25℃で処理し,その後,外植片をPGR無添加MS培地に置床した.15日後,外植片を新しい1/2MS + 0.1 mg L-1 BA + 1 mg L-1 GA3又は1/2MS + 1 mg L-1 GA3に移植した.
シュート増殖培養条件は上記に同じ.若い節のある茎が最もシュート誘導に効果的な外植片であり,ほぼ100%のシュート誘導率が得られた.それぞれの節は,20日の培養で,数本から20本以上のシュートを形成した.培地へのBA添加は,シャクヤクシュートを誘導し,0.1 mg L-1の低濃度よりも1 mg L-1の高濃度の方がより効果的であった.BA含有培地へのTDZの添加は,シュート形成率をそれほど増加させなかったが,明らかにシュートを短く,丈夫にした.GA3はシュートの伸長には非常に効果があったが,高濃度のGA3を含む培地で誘導したシュートは,細くて弱く,発根誘導に用いることは出来なかった.0.1から3 mg L-1のTDZは,'YFCY'の節切片に対し,非常に強いシュート誘導効果があり,100%のシュート形成率(シュートが誘導された外植片数/置床した外植片数)が得られた.'FLHZ'のシュート形成率は低かった.'FLHZ'のシュート形成率は,0.5 mg L-1より高濃度のTDZでは低下した.高濃度のTDZの前処理は,誘導されたシュートの茎の伸長が有意に阻害され,ショート伸長培地(1/2MS + 0.1 mg L-1 BA + 1 mg L-1 GA3)への移植後に大きな葉の塊となった.'XSF'のTDZショック処理(通常の使用に比べて非常に高い濃度での短時間の処理)は,同じタイプの外植片と同様のシュート誘導率が得られた.節のある茎切片及び接合部のある葉柄切片の20 mg L-1 TDZでの2,15又は60分の処理は,100%のシュート誘導率が得られた.接合部のある葉柄切片も,高濃度でのTDZ前処理後に高いシュート誘導能を示したが,誘導されたシュート原基は通常のシュートにならず,1外植片あたり,最大でわずかに3本のシュートが形成した.'XSF'のシュート数とシュート長は,ショック処理時間での違いは認められなかったが,20 mg L-1 TDZでの長時間処理では,不定芽数と不定芽の伸長が抑制される傾向が認められた.他の実験では,'XSF'の節を含む茎切片を20 mg L-1 TDZ,8℃,10時間処理で正常な伸長したシュートが得られた.
発根後の実験において,発根は,IBA含有半固形培地又はペーパーブリッジ法(液体培地)で得られた.
馴化条件
鉢上げ・定植
栽培条件
再生植物体の形質
分析した成分
成分の抽出法
分析法
備考