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組織培養物及び効率的増殖法_文献

植物名ダイオウ
ラテン名Rheum palmatum Linne
文献コードRheum_palmatum×R._coreanum-Ref-1
出典(著者,雑誌,巻号頁,発行年)特願平6-68436
要約(和訳)【目的】 シンシュウダイオウの遺伝的に同一なクローン植物を短期間に、かつ大量に作出する。 【構成】 シンシュウダイオウの組織培養において、0.1ないし1.0 mg/Lのインドール酢酸を 含有する培地でシュートを形成、増殖させて、シンシュウダイオウのクローン苗を作出する. 【効果】 遺伝的に同一な、センノサイド含有率の高いシンシュウダイオウが短期間に大量に栽培できる.
目的遺伝的に同一なシンシュウダイオウのクローン植物を短期間に、かつ大量に得られるようにすることを目的とする
材料(品種,系統,産地,由来)日本で品種改良された信州大黄(ホッカイダイオウR. palmatum×チョウセンダイオウR. coreanum Nakai))4年生株の側芽
外植片0.3-0.4 mmの茎頂
初期培養4年生株でセンノサイド含有率の定かな株の側芽の中から直径約5、7、10および15 mm側芽を切り取って、水道水で洗浄し、塩化ベンザルコニウム100倍液に10分間、70%エタノールに1分間、有効塩素1%の次亜塩素酸ナトリウム溶液に10分間の順に浸漬して殺菌し、滅菌水で3回洗浄した後、実体顕微鏡下でそれぞれの側芽から1、2および4 mmの茎頂を摘出した.MS培地にインドール酢酸(IAA) 0.25 mg/Lとベンジルアミノプリン(BAP)2.0 mg/Lを組み合わせ、ショ糖30 g/L、ゲランガム2 g/Lを添加し、水酸化ナトリウムおよび塩酸でpH5.8に調整し、試験管(径4 cm×高さ13 cm)に20 mLを分注した後、121℃で20分間滅菌した.茎頂は培地に1個を置床し、明期の温度は25℃、暗期の温度は20℃、明期の時間は16時間、照度は6000 Luxとし、培養は30日間行った.その結果、茎頂からのシュート形成率は全般に低く明確な差異がみられなかった が、置床した茎頂の中で新たなシュートを5本形成しているものが出現した(側芽の径:5 mm、茎頂:2 mmにおいてシュート形成率:10%、形成シュート数:5.0本).
シュート増殖茎頂から5本のシュートを形成したシュートだけを選び、そのシュートを個々に分割 し、同一組成の新たな培地に移植して培養する操作、すなわち継代培養を3回繰り返し、継代培養ごとのシュートの増殖数を検討した.その結果、継代培養ごとのシュートの増殖数は大きく異なることなく、順調に増殖した(シュートの増殖本数 1回目:4.1±3.1、2回目:2.6±1.7、3回目:3.9±2.3).しかし、個々に分割されたシュートの長さによっては増殖数に若干の違いが観察され、シュートの長さが1 cm以下の場合に増殖数が多かった.得られたシュートを用い、MS培地にBAPを単独で1.0、2.0および4.0 mg/L、BAP 2.0 mg/LにIAAを0.125および0.250 mg/Lを組み合わせて、シュートの増殖数を再度検討した.その結果、シュートの増殖数はBAPを単独で添加した場合に少なく、IAAとBAPを組み合わせことによって増加する傾向がみられ、至適な組み合わせはBAP 2.0 mg/LとIAA 0.25 mg/Lであった(シュート形成本数:3.8±2.6).
発根BAP 2.0 mg/LとIAA 0.25 mg/Lの組合せで培養して増殖したシュートを分割して、同一組成の新たな培地に移植し、継代培養を反復し て増殖させたシュートを用いて発根基材を検討した.発根基材はロックウールプラグ、バーミキュライトおよび水苔とし、発根基材を詰めた試験管にはMS培地の1/4量に、IAA 0.5 mg/Lとショ糖20 g/Lを添加した溶液を、試験管当たり20 mLを注入して、それぞれの発根基材に含浸させた.シュートは試験管に1本ずつ移植し、培養は50日間行った.その結果、水苔ではシュートからの不定根の形成が不良であったが、ロックウールプラグおよびバーミキュライトにおいては全てのシュートが発根した(ロックウールプラグ:発根率100%).また、発根基材としてロックウールプラグを用いて、MS培地の量およびIAAの添加量と不定根の形成の関係を検討した.MS培地は基本量、1/2量および1/4量、IAAは0.5、1.0および2.0 mg/Lとし、これらにショ糖20 g/Lを添加して、試験管当り20 mL注入して、ロックウールプラグに含浸させた.シュートは試験管に1本ずつ移植し、培養は40日間行った.その結果、MS培地の基本量では無機塩類の濃度が高く、IAAの添加量に関係なくシュートからの不定根の形成が不良であった.また全般にIAAの添加量が高くなると、シュートの基部のカルス化が起こり、最も好適な条件はMS培地の量を1/2量とし、IAAを0.5 mg/L添加した場合であった(発根率:70%).さらに、MS培地の量を1/2量としてショ糖の添加量と不定根の形成の関係を検討した.MS培地は1/2量、IAAは0.5 mg/Lとし、ショ糖は0、5、10および20 g/Lを添加し、培養は40日間行った.その結果、ショ糖の添加量が10 g/L以下ではシュートからの不定根の形成が著しく不良で、20 g/Lを添加した場合において多くのシュートから不定根が形成された(発根率:85%).シュートの大きさと不定根の形成の関係を検討した結果、小さなシュートからの不定根の形成は不良であったが、シュートの長さが約1 cm以上では不定根が良好に形成された.
馴化条件記載無し
鉢上げ・定植記載無し
栽培条件記載無し
再生植物体の形質同一形質のクローン苗を多数育成して、栽培のための圃場に植え付けて4年間栽培し、また、同一圃場にも種子から育成した苗を植え付けて4年間栽培し、株ごとの乾燥根の重量(収量)およびセンノサイド含有率を比較した.その結果、乾燥根の株平均の重量は、種子から栽培した場合を100とすると、クローン苗を栽培した場合では110と増収した。株平均のセンノサイド含有率は、種子から栽培した場合が0.99%であったのに対して、クローン苗を栽培した場合では1.62%と著しく高かった.また、株ごとのセンノサイド含有率の変動率は、種子から栽培した場合が33%であったのに対して、クローン苗を栽培した場合では11%を示し、品質の均一化の顕著なことが確認された.
分析した成分記載無し
成分の抽出法記載無し
分析法記載無し
備考Rheum palmatum Linne×R. coreanum Nakai