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組織培養物及び効率的増殖法_文献

植物名シャクヤク
ラテン名Paeonia lactiflora Pallas
文献コードPaeonia_lactiflora-Ref-7
出典(著者,雑誌,巻号頁,発行年)Yu XN et al, African Journal of Biotechnology 11(41): 9776-9781 (2012)
要約(和訳)シャクヤク(Paeonia lactiflora Pall.) ‘Da Fu Gui’の地下の芽を試験管内でマイクロプロパゲーションさせた。初期培養物誘導、シュート誘導、腋芽増殖、発根の基本的工程を確立した。‘Da Fu Gui’初期培養物誘導の最適培地は、 0.5 mg l-1 6-benzylaminopurine (BA) + 0.5 mg l-1 gibberellic acid (GA3)含有1/2MS (Murashige and Skoog)培地(Ca2+はMSの2倍) であった。腋芽誘導の最適培地は、1.0 mg l-1 BA + 0.5 mg l-1 kinetin (Kin)、一方シュート増殖の最適培地は 0.5 mg l-1 BA + 0.3 mg l-1 Kin含有のいずれも1/2MS培地(Ca2+はMSの2倍)。植え付け時のシュートの草丈は、‘Da Fu Gui’の増殖と生育に大きく影響を及ぼした。Putrescine (Put) (0.5 - 5.0 mg l-1)は‘Da Fu Gui’の発根を妨げたが、根の発達は促した。最高の発根率は、1 mg l-1 indole-3-butyric acid (IBA)含有1/2MS培地(Ca2+はMSの2倍)で認められた。
目的シャクヤクのマイクロプロパゲーション
材料(品種,系統,産地,由来)鑑賞的価値が高い伝統的中国の品種で、試験管内での増殖が良く、操作への反応性が高い優れたシャクヤク品種の‘Da Fu Gui’
外植片The Society of Forestry Experimental Stationで春に採取した2年生の地下の芽(約3 cm長、萌芽と休眠芽の中間)
初期培養地下の芽は、置床前に水道水で30分間洗浄した。鱗片を剥いだ芽を75%エタノールに30秒、続いて希釈したHgCl2(0.1% w/v)で10分間殺菌した。芽はオートクレーブした蒸留水で5分間ずつ5回濯ぎ、0.7%寒天で固化した固形培地30 mLが入った100-mL Erlenmeyerフラスコに、1芽/フラスコで植え付けて培養した。全ての実験の基本培地は、2倍濃度の塩化カルシウム(Ca2+)と30 g L-1ショ糖含有1/2MS培地とし、‘Da Fu Gui’の初期培養物誘導に対する GA3 (0.5 mg l-1) と BA (0.5, 1.0, 1.5及び2.0 mg l-1)の組み合わせの効果を調べた。全ての培地は 118°C、18分間のオートクレーブ前にpH5.8に調整した。培養器は 25 ± 2°C、14時間明期(50 μmol m-2s-1 PPFD、白色蛍光管)の環境下に置いた。データは培養30日後に収集した。外植片は30日ごとに継代した。 0.5 - 1.5 mg l-1 BAを含む初期培養物誘導培地は、地下の芽の生育に適しており、萌芽率100%であった。最高の葉の展開率(96.97%)とシュート長(3.61 cm)は1.0 mg l-1 BA + 0.5 mg l-1 GA3で観察された。最高の腋芽形成数(2.42)と高いシュート長は最低濃度のBA (0.5 mg l-1)で認められたが、高濃度のBA (2.0 mg l-1) にはシュートの生育を促す効果は認められず、萌芽率(78.90%)、葉の展開率(66.27%)、腋芽形成数(1.72)はいずれも最低であった。さらに、高濃度のBAは外植片の生育を阻害し、水分過多やシュートの形態異常を引き起こした。以上腋芽形成数が多い(2.28)、1.0 mg l-1 BA + 0.5 mg l-1 GA3が‘Da Fu Gui’の初期培養シュートの誘導に最適であると判断した。
シュート増殖腋芽誘導への各処理の効果を調べた。シュート誘導培地は、1/2 MS + 1.0 mg l-1 BA、1/2 MS + 1.0 mg l-1 BA + 0.5 mg l-1 Kin、1/2 MS + 1.0 mg l-1 BA + 0.5 mg l-1 Kin + 0.1 mg l-1 IBA、1/2 MS + 1.0 mg l-1 BA + 0.5 mg l-1 Kin + 0.1 mg l-1 IAAとした。腋芽増殖のため、2つの実験を行った。はじめにシュート増殖に対する処理の効果を調べた。処理は、1/2 MS + 0.5 mg l-1 BA + 0.3 mg l-1 Kin、1/2 MS + 0.5 mg l-1 BA + 0.3 mg l-1 Kin + 500 mg l-1 casein hydrolysate (CH)、1/2 MS + 0.5 mg l-1 BA + 0.3 mg l-1 Kin + 0.2 mg l-1 IBAとした。続いてシュート増殖と‘Da Fu Gui’の生育に対する植付けシュートの長さの効果を調べた。シュートは、培養前に高さに合わせて3群、 (1, ≤1 cm; 2 = 1 - 2 cm; 3, ≥ 2 cm)に分け、培地は0.2 mg l-1 BA又は植物生長調節物質無添加1/2MS培地とした。腋芽は培養3週間後から形成し始めた。培養20日後、芽の成長点部分と根元から10本以上の腋芽が形成した。1.0 mg l-1 BA + 0.5 mg l-1 Kinは、最高の腋芽誘導率 (58.93%)が得られた。最も多い腋芽形成数(12.29)と最低の腋芽誘導率(37.30%)は1.0 mg l-1 BAで得られた。1.0 mg l-1 BA + 0.5 mg l-1 Kinを含む培地への0.1 mg l-1 IBA又は0.1 mg l-1 IAAの添加は、腋芽形成数を低下させた。以上より、腋芽誘導には1.0 mg l-1 BA + 0.5 mg l-1 Kinが最も適していた。腋芽増殖においては、 0.5 mg l-1 BA + 0.3 mg l-1 Kinで少し高いマルチプルシュート数(3.3) が得られた。500 mg l-1 CH又は0.2 mg l-1 IBAの添加は腋芽増殖には適さなかった。以上より、‘Da Fu Gui’腋芽増殖の最適培地は、0.5 mg l-1 BA + 0.3 mg l-1 Kinであった。シュートの長さの効果については、最大葉数(7.95)、最高シュート長(2.96 cm)、最も高い生育の良いシュートの割合(79.90%)はPGRs無添加1/2MS培地、2 cm以上のシュートで得られた。BAの有無に関わらず、2 cm以上のシュートが最も良い効果が得られ、次いで1 - 2 cmのシュート、1 cm未満のシュートであった。培地へのBA添加は生育不良を招き、徐々に水分過多になり、徒長が生じた。夏場の過湿は容易にシュートの休眠や弱化を生じさせるため、低濃度(0.2 mg l-1)であってもBA添加はシュートの継代培養には有害であった。以上から、暑い夏月の間の継代培養は、2 cm以上のシュートをPGRs無添加1/2MS培地で培養するのが最適であった。
発根5番目の実験において、‘Da Fu Gui’の発根に対するPut (0、0.5、1.0、2.0、3.0及び5.0 mg l-1) の1 mg l-1 IBAとの組み合わせの効果を調べた。発根過程においては、シュートを20日間異なった発根培地で培養し、その後、0.2%活性炭(AC)含有PGRs無添加1/2MS培地に移植した。増殖及び発根に用いたシュートは、Put 2.0 mg l-1以外は2 cm長のシュートを用いた。根は0.2%ACを含むPGRs無添加1/2MS培地への移植20日後にシュートの基部に形成した。最高の発根率(28.15%)は1.0 mg l-1 IBA + 0 mg l-1 Putで得られた。Put添加は発根率は低下したが、根やシュートの品質は良く、頑強で水分過多が認められなかった。最高の発根数(4.50)、根長(2.07 cm)、葉数(5.05)、草丈(2.80 cm)は1.0 mg l-1 IBA + 2.0 mg l-1で認められた。より高濃度のPut(3.0 to 5.0 mg l-1)は発根に悪影響を及ぼした。このようにPutの発根への促進効果は認められなかった。
馴化条件
鉢上げ・定植
栽培条件
再生植物体の形質
分析した成分
成分の抽出法
分析法
備考