薬用植物総合情報データベース

組織培養物及び効率的増殖法_オリジナル

植物名シナニッケイ
ラテン名Cinnamomum cassia Blume
オリジナルコードCinnamomum_cassia-Exp-1
発表(著者,雑誌,巻号頁,発行年)吉松ら.AROMA RESEARCH, 21 (3), 211-219 (2020)
目的Cinnamomum cassia Blumeの植物組織培養による効率的増殖法の開発
材料(品種,系統,産地,由来)武田薬品工業株式会社京都薬用植物園のガラス温室内で採取した2017年度産種子(9粒,1粒重:210.8±33.1 mg)
外植片種子
外植片の殺菌果実より取り出した種子を,75%エタノールで1分間殺菌後,滅菌水で漱ぎ,さらに殺菌液(0.1 vol% Tween20を含む有効塩素濃度3%の次亜塩素酸ナトリウム溶液)で30分間殺菌した後,滅菌水で計7回漱いだ.
初期培養殺菌後の種子は,2%ショ糖,0.25%ゲルライト含有,植物ホルモン無添加(HF),主要無機塩類濃度が1/2のMS培地[(2)/2MS HF,30φ]に置床し20℃暗所で培養した。発根した種子は,随時,3%ショ糖,0.25%ゲルライト,グルタミン10 mg/L含有Woody Plant(WP)培地(WPG HF)に移植し,23℃,14時間明期(植物育成用LEDプラントフレック:約8,000 Lux)で培養した。播種後238日までに,全ての種子が発根・発芽(子葉は種皮内に留まったままで未展開)し,播種131日後の発根率及び発芽率は88.9%であった.
シュート増殖得られた無菌実生を増殖試験に供試した.無菌実生,シュート培養及び培養植物体から調製した頂芽切片を3-indolebutyric acid (IBA) 1 mg/Lと6-benzyladenine (BA) 3 mg/Lを添加した培地で培養するとマルチプルシュートが形成した.
発根マルチプルシュートから調製したシュート切片をIBA 1 mg/L添加培地で培養すると,発根率37%で発根した植物体が得られた.この増殖方法により,理論的には,1種子から半年で22本の植物体を得ることが可能である.
馴化条件培養植物体は,培養試験管から取り出し,水道水で洗浄後,バーミキュライトに植え,温室(20℃以上で管理)で栽培した。植え出し1週間は,植物体地上部を透明なラップで覆い高湿度を維持した.潅水は底面給水とし,植出し後2週間は酸化型グルタチオン(GSSG)1 mg/L液あるいは植出直後から純水での給水とした.シュート切片をIB 0.5 mg/L添加培地で培養して得られた培養植物体をバーミキュライトに植え出し,純水を与えながら馴化したところ,正常に生育し,鉢上げが可能であり,馴化時のGSSGの施用は必須ではないことが判明した.
鉢上げ・定植馴化完了後の植物体は,5号鉢[赤玉土-堆肥-タキイの育苗培土(草花・野菜育苗用)-川砂=6:2:1:1]に鉢上げし,温室(20℃以上で管理)で栽培したところ,正常に生育した.
栽培条件
再生植物体の形質
成分分析法
生産物
参考文献(著者,雑誌,巻号頁,発行年)
備考
写真データ
写真、図表 写真、図表などの種類 写真、図表などの説明
外植片の写真 果実:武田薬品京都薬用植物園2017年産
外植片の写真 種子:武田薬品京都薬用植物園2017年産
幼植物の写真 実生(無菌):1/2MS, 2%ショ糖,53日間
幼植物の写真 実生(無菌):WPG, 2%ショ糖,62日間(播種112日)
シュートの写真 移植1代目の培養シュート:頂芽植付,WP IB1B3,105日間
幼植物の写真 移植1代目の培養植物体:頂芽を切除した実生植付,WP HF,105日間
幼植物の写真 移植2代目の培養植物体:頂芽植付,DKW/JUGLANS(DKW)培地 IB1,64日間
シュートの写真 移植2代目のマルチプルシュート:頂芽植付,DKW/JUGLANS(DKW), IB1B3,64日間
幼植物の写真 移植2代目の培養植物体:頂芽を切除した実生植付,DKW HF,64日間
再生植物体の写真 鉢上げ後の植物体(移植2代目の培養植物体:頂芽を切除した実生植付,DKW HF),土壌植出136日後
シュートの写真 移植4代目のマルチプルシュート:小シュート塊植付,DKW IB0.5B0.5,54日間
幼植物の写真 移植4代目の培養植物体:頂芽植付,DKW IB0.5,55日間
再生植物体の写真 鉢上げ後の植物体(移植4代目の培養植物体:頂芽植付,DKW IB0.5),土壌植出48日後
植物体再生図表 種子を外植片とする植物組織培養による効率的増殖法の概略